社会不適合者という言葉は、大まかに「社会に馴染めてない人」を指す言葉として用いられますが、厳密な語義や定義は決められていません。
その背景に、一言に「社会不適合者」と言っても特徴や状況は多岐にわたり、単一の基準で捉えられるものではないからという理由が挙げられます。
そのためか、国内の社会不適合者の割合や統計を行ったデータは世の中に存在していません。
ですがこの記事では、別の切り口から調査を行い、社会不適合者の割合を推察していこうと思います。
①国内の引きこもり者数
まずは、「社会不適合者」の代名詞として印象が強い、引きこもり者数を見てみましょう。
2022年に内閣府が行った「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、生産年齢人口(15歳~64歳)のうち、引きこもり状態にある人は推計146万人であると発表されています。
当時の国民数で算出すると、全人口のうち2%、言い換えると50人に1人が引きこもり状態にあったことが分かります。
当時の統計結果によると、コロナ禍の影響もあり、退職をきっかけに引きこもりになってしまった方も多いようです。
ですが、コロナウイルスが国内で流行り始めた直後の2020年の調査時点で既に100万人だったという推計データもあることから、一概にコロナウイルスが原因で一時的に引きこもり者数が増えたわけではなく、別の要因も影響して数値が増加傾向にあるのではと考えられます。
②国内の失業者数
次に国内の失業者数を調べてみました。
ここでは「完全失業者」の数を取り扱います。
「完全失業者数」とは、15歳以上で働く意欲のある人のうち、職に就いておらず求職中の人を指します。
仕事に就いていないということと社会不適合であることは決して同じとは言い切れないものの、世間一般が認識している"社会不適合者"の範囲が広いこともあり、この記事では敢えて完全失業者数も社会不適合者の特徴のひとつとして取り扱うこととします。
こちらに関しては、総務省統計局発表の「労働力調査結果」にて適宜統計されており、2024年3月時点で163万人と発表されております。
また、コロナウイルス感染が落ち着いたこともあった為か、前年同月に比べて1万人ほど減少しているという調査結果も同時に発表されております。
完全失業者とは、1週間以内に求職活動を行っている方を指すため、定期的に外出しているという点では「引きこもり」に該当しないかもしれません。
そうなると(統計実施年月は異なるものの)現代の引きこもり者数と完全失業者数は合わせて300万人超となり、それだけ社会不適合者の方がいるとも言い換えられるでしょう。
③国内の適応障害患者数
しかし仕事に就いているからと言って、社会不適合者ではないと言い切れるのでしょうか。
そこで、今度は「適応障害」と診断された患者の数を見てみます。
そもそも「適応障害」とは、メンタル不調のひとつで、職場などの環境にうまく馴染むことが出来ず、心身に支障をきたす症状のことを言います。
「社会に馴染めてない人」を指す「社会不適合者」と似た特徴を持っているともいえるでしょう。
この適応障碍者数ですが、日本システム技術株式会社による調査によると、2022年時点で4万人を超えており、2018年から5年間の間で1.7倍に増加しているようです。
増加傾向にある理由は明らかにされていませんが、「職場不適応が増加していることに一因がある」と指摘した研究結果も存在していることから、日に日に業務内容が複雑化していく今日において、患者数は今後も増加するのではないかと予想されます。
このことから、就職したとしても、社会不適合者に該当すると考えられる方がいらっしゃると推測されます。
参考:池田 朝彦「日本における「適応障害」患者数の増加」(『社会政策』12 (2), 101-112, 2020)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/12/2/12_101/_article/-char/ja
結論
以上の結果を合算して、2024年現在の日本人口を踏まえて社会不適合者数の割合を計算すると、人口全体の約3%が社会不適合者だと概算できます。
30人に1人の割合です。
しかし先述したように、「社会不適合者」の定義は明確ではない為、今回の調査結果が正確なものかどうかは定かではありません。
このように「社会不適合者」の定義づけがなされていないことや、その統計結果が調査されていないことから、社会全体の「社会不適合者」に対する理解はまだまだ浅いことが分かります。
このことから、社会不適合者だと感じている人が抱える問題に対して、社会全体が理解を深め、必要な支援や対策を講じることが、日本の課題のひとつと言えるでしょう。